岩陰(rock shelter)上座部仏教では、出家者はできるだけ釈迦の言動や教えに忠実であろうとする。修行時代の釈迦は乞食遊行、一所不住を旨とし、屋根のあるところに住もうとはしなかったと伝えられる。そこで出家した僧侶たちは、雨露をしのげる庇状の岩の陰を修行の場所と定め、また生活の場とした。後になって、こうした岩陰は、在家信者が僧団へ寄進するようになった。さらに、岩陰の壁面を利用して岩面画が描かれる場合があり、仏教に関係のある画とともに、スリランカの先住民であるウェッダーの描いたと思われる力強い筆致の動物や人物の姿なども発見されている。なお、岩陰より深い洞窟状のものは「岩窟」と記して区別した。 |
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カターラン(kata-ran or kata-rama)岩陰の天井上部に刻まれた雨止め用の溝。岩の庇を伝わって来た雨水は、この溝のところで下へ落ち、岩陰内部まで雨水が入らないようになっている。 |
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刻文(inscription)岩陰の天井部分や遺跡のあるガラの表面などによく刻まれている文字。シンハラ文字の祖型であるブラーフミー文字が用いられる。字体などからある程度の年代が推測でき、遺跡の建立年代の推定に役立つ。前述したように、岩陰は在家信者の人々が建立して僧団へ寄進するようになり、岩陰に刻まれている刻文の多くはそうした人々の寄進文である場合が多い。 |
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仏塔(stupa or dagoba)釈迦の遺骨をまつった仏舎利塔に起源がある塔で、年代によって建築様式が異なる。初期のものは土盛りとレンガによって伏鉢のドームを築き、その上に一本または二本の石柱を立てて円盤状の傘を乗せた。その後上部塔の様式が進歩するにつれて、中国や朝鮮、日本などで見られる多重塔の原形ができ上がった。 |
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菩提樹祭壇(Bo-tree alter)釈迦はブッダガヤのインドボダイ樹の下で成道したとされる。このインドボダイ樹の分枝がスリランカにもたらされ、各地に植えられて信仰の対象となった。仏教寺院の境内にかならず植えられ、四囲をレンガや石垣で囲み、祭壇とした。 |
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ムーンストーン(月石moonstone)仏塔や本堂などの入り口におかれる半円形の石。ゾウや牛、鳥などの装飾模様が刻まれる場合がある。 |
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供花台(flower-offering basin)在家信者が花を供える台。仏塔や菩提樹祭壇の前などにおかれる。長方形の石盤で、しばしば縁の部分が壇状に削られて装飾が施されている場合がある。 |
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守護神像(guardstone)建造物の入り口に対になっておかれる。石板の上に守護門神(dva-rapa-la)などが浮き彫りにされる場合があるが、初期のものは「豊饒の壺」が刻まれているか、または何も刻まれていないものもある。 |
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パタハ(pataha)岩丘上の遺跡につくられる雨水を溜める貯水池。自然の縦穴を利用して溜め水穴がつくられるが、横穴式に穿たれる場合もある。一年に一回しか雨季のないドライゾーン地域では、貴重な水を溜め置くための一つの知恵と言える。 |
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ガラ(gala)文字通りのシンハラ語の意味は石や岩であるが、ここで使用する「ガラ」とは岩丘のこと。当地方はほとんどが高低差の少ない平坦な地形であり、特に調査地域には広大なジャングルが広がっている。そのジャングルのあちこちにガラ(岩丘)がそびえ、単調な景観にアクセントを与えている。また、こうしたガラの上には遺跡が多く発見されている。 |
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オヤ(oya)、エラ(ela)自然の河川のこと。流水量の比較的多いものをオヤと呼び、少ないものをエラと呼ぶ。ちなみにオヤを上回る大河川をガンガ(ganga)と呼んで区別する。 |
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ウェワ(wa..wa)貯水池のこと。雨季に集中的に雨が降り、乾季にはほとんど降らないドライゾーンで水田稲作農業を行なうためには不可欠の施設。今日では無人のジャングルとなっている地域にも、数多くの放棄された貯水池跡が眠っている。 |
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ビソーコトゥワ(biso-kotuwa)貯水池の土手を地下水路で結んで下流に水を排出する暗渠式水路システム。紀元2世紀に完成したといわれる石やレンガを組み合わせたこの工法は、極めて高度な技術が使われており、後にスリランカおよび南インドの寺院建築にも大きな影響を与えた。 |