NPO南アジア遺跡探検調査会のスリランカ密林遺跡探査隊2016は、去る8月8日にコロンボを発ち、同11日に最奥集落のマーリガウィラからジャングルに入域して、クンブッカン河畔にベースキャンプを設営して以来、連日、遺跡探査を続けていましたが、同22日にすべての活動を終えて村へと引き揚げてきました。

  探査の期間が短かったこともあって、成果のほうはいまひとつといったところで、最大目標であったタラグルヘラ山の遺跡は残念ながら発見できませんでしたが、代わりに、河岸近くのイリヤポラと呼ばれる一帯で、地図にない未調査の仏教寺院遺跡を発見し、2日間にわたって詳しく調査することができました。

  発見したイリヤポラの寺院遺跡は、スリランカでは中規模程度の遺跡ですが、仏塔や布薩堂、岩盤薬草浴の施設などの伽藍遺構が多く、今後、収集データを整理して、わかりやすい形でご報告したいと思います。

  タラグルヘラ山の遺跡に関しては、河岸からの最短直線距離が約5キロと短いにもかからず、地図上で選んだ地点にベースキャンプを作れなかったことと、密林が猛烈な茨の下生えを伴っていて入りにくく、獣道(象の道)を選んで進むアプローチルートが予想外に伸びて日帰り往復が困難になったことなどから、二度の挑戦でも山塊の一端にたどり着いただけで調査できずに終わりました。失敗の原因はほかにも多々あると思われますし、今回、この目標に向かうための課題が明らかとなりましたので、次回はこれを糧に計画を立て直そうと考えている次第です。

  それらはともかく、今回は18人(現地スタッフを加えて32人)の大所帯となった隊が、無事に活動を終え、都市部に引き上げてきたことを、まず皆さまにご報告し、ご支援へのお礼に代えさせていただきます。皆さま、本当にありがとうございました。

 以下の写真は、調査地の密林と、発見したイリヤボラの寺院遺跡、探査・調査に当たる隊員たち。

密林は展望が利かず、GPSも使えない。岩の丘に登って、ようやくタラグルヘラの姿をとらえた。

密林は展望が利かずGPSも使えない。岩の丘に登って、ようやくタラグルヘラの姿をとらえた。

ベースキャンプ一帯の密林。遠方の山はチムニーガラ(1056m)。

ベースキャンプ一帯の密林。遠方の山はチムニーガラ(1056m)。

獣道(象の道)を選んで密林に分け入る探査隊、茨の下生えで前進に苦労する。

獣道(象の道)を選んで密林に分け入る探査隊、茨の下生えで前進に苦労する。

発見したイリヤボラの寺院遺跡。仏塔跡から寺院敷地を望む、

発見したイリヤボラの寺院遺跡。仏塔跡から寺院敷地を望む、

方形基壇も伏鉢も完全に崩落した仏塔跡。頂上には盗掘跡があった。

方形基壇も伏鉢も完全に崩落した仏塔跡。頂上には盗掘跡があった。

仏塔跡の装飾煉瓦を調べる調査隊員。

仏塔跡の装飾煉瓦を調べる調査隊員。

布薩堂跡と思われる石柱群。

布薩堂跡と思われる石柱群。

布薩堂の入り口は東側を向き、ここも盗掘されて幻獣マカラの像が刻まれた階段手摺のみが残されていた。

布薩堂の入り口は東側を向き、ここも盗掘されて幻獣マカラの像が刻まれた階段手摺のみが残されていた。